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Page 1 : 「ヌーベルまんが」 言葉の由来 フレデリック・ボワレ(以下FB)- 季刊誌「コミッカ− ズ」の元編集長で現「美術手帖」編集長、楠見清氏がこの言葉の発案者です。単行本『恋愛漫画ができるまで』(短編、イラスト、『半分旅行』邦訳掲載)が1999年、日本で出版された際、その帯に当時、担当者だった彼が《MANGAヌーベルバーグの誕生》と書いたのです。私の漫画に対して日本の読者、出版関係者が感じていたものを、この表現に要約した訳です。私の作品が日本に紹介されて2年が経っていましたが、私の描く話はフランスBD風でもなく、日本漫画風でもなく、言ってみれば、絵のスタイルはフランスBDに近いが、日本漫画のように読めると受け取られていました。そしてそのテーマと雰囲気はフランス映画を彷佛させると。 その後すぐに「ヌーベルまんが」と略され、この言葉は2000年1月、日本のメディアに初めて登場しました。ジャーナリストの住吉知恵氏がモード誌「GINZA」に執筆した《フランスのBDと日本製コミックの結婚、「ヌーベルまんが」》という記事です。 JB - これを受けて、あなたは日常を描く作家主義の漫画を「ヌーベルまんが」と呼ぶことにしたのですね。この漫画と新しいフランスBDとの共通性を指摘していますが、「ヌーベルまんが」というのは、日仏の漫画の世界で同時に起きている表現運動、あるいは両国の表現方法を取り入れた新しい漫画の形を意味するとも言えるわけですか? FB - 作家主義の漫画というのは普遍性がある、と私は思っています。これは、90年代のヨーロッパとアメリカで生まれましたが、何年か先行していた日本も含んでいます。「ヌーベルまんが」という用語は、ヨーロッパ、日本、アメリカの作家達の共通の問題意識、イニシアティブを表すと言えなくもありません。このアイディアは私が言い始めたものですが、具現化していくとなると、当然、私ひとりの力では無理です。 目下のところ、「ヌーベルまんが」は、まだ控えめな意味にとどまります。既に述べましたが、 先ず第一にフランスBDと日本漫画の間にあって、日本人の目にはフランス映画のエスプリを漂わせる漫画表現を意味します。今現在、この「ヌーベルまんが」に該当する作家は私、というか、私だけです。ゼロに近い存在ですが、千里の道も一歩からです。 フランスには日本漫画の絵の表現コードに影響を受けた、新しい世代の漫画家たちがいます。ストーリー的には典型的なフランスBD(90年代初めのマリニ作品を連想する)あるいは、はっきり言ってアメリカンコミック(ごく最近のグレナ社の本に似た)スタイルのまま、日本から来た新しい絵のスタイルやタッチを取り入れています。彼等の漫画は2つのジャンルから影響を受けていますが(グレナ社の場合は3つ)、重要なのは彼等がそれらのジャンルにどんな "貢献" をするかということです。 私の作品を定義するのに「ヌーベルまんが」と言う表現が使われるのは、私の作品がただ日本漫画から影響を受けるだけでなく、なんらかの形で日本漫画に "貢献" しているからだと思います。 "貢献" と "交流" の概念が確立、そして理解され、「ヌーベルまんが」が "許容" と "意志" を意味するものになれば、該当するのは私ひとりではなくなります。こうなれば既に多くの先駆者がいますし、多分、後継者も多く現れることでしょう。 先駆者の一人として、私はもちろん谷口ジローを挙げます。彼を知ってはや10年。初めて出会ったのは1991年1月、彼が二人の日本人作家と共に招待されていたフランスのアングレーム国際BDフェスティバルでのことです。その年、フェスティバルは日本漫画をテーマに取り上げており、当時の極一部のフランス人ファンには嬉しい事でしたが、一般大衆やメディアは全体的に無関心でした。2年後には日本漫画 "ブーム" が起こるのですが。 当時のフランスの一般大衆は、多分日本のテレビアニメなら知っていても、紙媒体の日本漫画などその存在すら全く知らなかったのです。日本漫画ファンも結局のところ、大友克洋や士郎正宗など2〜3の漫画家一辺倒でした。面白い事に、これはフランスBDに関する現在の日本の状況と全く同じです。ほとんどの日本人はフランスBDというものがあることさえ知らず、数少ないファンでさえも、結局のところ2〜3の "フレンチコミック" 作家しか挙げられません。 あなたの質問に戻リましょう。このエスプリや表現運動云々を抜きにしても、「ヌーベルまんが」は、1つのキーワードとしての役割があり、その目的は、フランスBDと日本漫画にはもっと良いものが他にもあると言う事を日仏両国に知らしめる事です。 |
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© 2001 Julien Bastide / Frederic Boilet このテキストの一部あるいは全部を無断で利用(コピー)することは、 著作権者の許可がない場合、禁止です。 |